おいおい勘弁な(評価: )
1972年リリースの本作がイエスの打ち建てた金字塔である事は間違いないが、あまりに絶賛
一色だと精神衛生上気持ち悪いのであえて云うが、、
確かに「危機」、「同志」、「シベリアン・カトゥール」とどれをとってもこれ以上ない
緊張感で心はフルに振幅しぱなっしだが、あまりに語り尽くされてる前提を抜けばこの作品
には旧来のイエスにない難点が多々あるし、その後の一皮剥ける兆候はまだない。
コンセプトという意味では「リレイヤー」の方が数段上だし(私的イエス最高傑作)。
メンバー各々の個性、そして絶妙な調和を感じたいなら「こわれもの」の方が優れている。
この作品は本当に良くも悪くもリック・ウェイクマンにレイプされたイエスって感が否めない
と思う。前作、前々作にあったハウの浮世離れしたスタイルも影を潜め、大作にこだわるが
故にアンダーソンの個性も消滅し(彼はこの作品で変に哲学的なレッテルを貼られることにな
るが、実際はもっと余計な物を削ぎ落とした、それこそacoustic guitar一本で表現できるような本質的な音楽観の持ち主で、取って付けたような本作の詩は何の魅力も感じない、、)、
何よりリック・ウェイクマンの加入により居場所が消えたのがブラッフォードであって、彼の
プレイスタイルは「余裕」、「間」というものを持たないウェイクマンとは最も噛み合わない
部分がある。(いわゆる同属嫌悪的な)
巨大すぎる前提を取っ払って真摯に聴けば、みえてくるものがあまりに多すぎて、、絶賛一色
の解釈にはおいおい勘弁なと思う次第だ。今となって思えばこの黄金期といわれる
ラインナップでこの作品に満足感を感じてるのはウェイクマンとすっごいベース聴かせてる
クリス・スクワイアだけじゃないかと思ったりもする。ただこう云々してると僕がリック・ウ
ェイクマンが嫌いなだけじゃないかと誤解されそうだが、僕は彼のソロ作品はほぼ持っていて
その上で考察するとやはり彼の「スター性」はバンドの一員なんてポジションじゃうまく機能
しないと感じる。
だが彼がいなきゃこの作品は絶対に出来なかった、もっというならブラッフォードもいなきゃ
できなかった。だからといって次作の「海洋地形学の物語」の様などうしようもなく形容でき
ない世界観でもない本作は、まさにこれ以下でも、これ以上でもない一瞬だけの輝きだったん
だろう。だからこそこの【危機】は比類ないスリリングさを持つことになったのだと思う。
と、不満をツラツラ連ねる事になったが、まだイエスを聴いたことがない人にとってはどうで
もいいことで、未聴の人で興味を持った方はすぐさま聴かれたしだな。きっとあなたの知らな
い「悦び」がある事だけは絶対に間違いない。すごいぞ。
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